結婚記念日に、
ふたりで育てる一鉢を選ぶ
結婚記念日の贈りものに、観葉植物を選んだ年がある。 渡して終わりではなく、次の記念日まで部屋に残り、ふたりで育てていくものになった。 水を足すのは、気づいた方でいい。それだけで、一年はちゃんと続いていく。

記念日が近づくと、毎年同じことで少し迷う。 いつもより少しいい店を予約して、花を一束買って帰る。 それはそれで嬉しいのだけれど、数日たつと花瓶の水が濁り、その夜のことも日常に紛れていく。 何年目かの記念日に、ふたりで一鉢を選びに行った。
贈り合うのではなく、ふたりの部屋に置くもの
結婚記念日の贈りものは、どちらかがどちらかに渡すものだと思っていた。 けれどその年は、相手のために選ぶのをやめて、ふたりの部屋に何を置くかを一緒に考えた。 棚の空いている一段を見て、ここなら朝の光が入るね、と話す。 蔓が垂れるものがいいか、葉が大きく開くものがいいか。 選ぶ時間そのものが、その年の記念日の過ごし方になった。 二人暮らしをはじめる人に贈るときにも考えることだけれど、 ふたりで暮らす部屋の植物は、どちらか一方のものにならないほうが、長くそこに居られる。
世話の当番は、決めなかった
一緒に育てるなら、水やりの担当を決めたほうがいいのか、と最初は考えた。 結局、決めなかった。 透明な器は、水が減っていれば外から見える。 朝、コーヒーを淹れながら目に入って、少し足す。 夜、相手が先に気づいて足しておいてくれる日もある。 どちらが世話をしたのか、はっきりしないまま、葉は一枚ずつ増えていった。 分担を決めるより、ふたりの視界に入る場所に置くこと。 続いた理由は、たぶんそれだけだった。
次の記念日に、育った分を確かめる
一年たって、また記念日が来た。 棚の上の一鉢は、去年選んだときより、蔓がずいぶん長くなっていた。 選んだ日に撮った写真を出してきて、同じ場所から、同じ角度でもう一枚撮る。 届いた日の写真と、いまを並べてみると、 その一年にあったことまで、なんとなく思い出せる気がした。 それからは、記念日ごとに一枚ずつ写真が増えている。 根が器いっぱいになった年には、その日に新しい鉢をふたりで選んだ。
贈りものを交換する日から、育ったものを確かめる日へ。
花束も、少しいい夕食も、いまでも記念日の楽しみではある。 ただ、その日が過ぎても部屋に残るものがひとつあると、次の記念日までの一年が、少し近くに感じられる。
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