テレビの横に、
緑をひとつ置いてみる

テレビの横は、部屋のなかでいちばん長く目を向けている場所です。 そこに小さな一鉢を置いてみたら、画面を消したあとの黒い面が、 ただの黒ではなくなりました。

テレビボードの端に置くのにちょうどよい、蔓を伸ばしはじめた水耕仕立てのポトス

一日のうち、どこをいちばん長く見ているだろうと考えたことがあります。 答えは、たぶん、テレビの画面でした。

それなら、その横に何を置くかは、 本棚の隙間や玄関の棚よりも、 ずっと長く目に入っているということになります。 そう気づいてから、テレビボードの端に一鉢を置いてみました。

消したあとの、黒い面のこと

テレビがついているあいだは、正直、横のものは見ていません。 画面の光が強いので、周りは暗くなっている。 置いてよかったと思ったのは、むしろ消したあとの時間でした。

電源を切ると、そこには大きな黒い長方形が残ります。 何も映していない画面というのは、 部屋のなかでいちばん静かで、いちばん無機質な面かもしれません。 その隣に葉があると、黒が背景になります。 画面が主役をやめて、うしろに下がる感じがありました。

暗い色の面の前にある葉は、輪郭がはっきり見えます。 夜、部屋の灯りの下で見る植物のことを書いたときにも 似たことを感じましたが、 光より先に、背景の暗さが葉の形を決めているのだと思います。

高さと、距離を決めるまで

最初は、画面のすぐ横に置きました。 これは落ち着きませんでした。 背丈が画面と近いと、見ているときに視界の端でちらつきます。 在宅ワークの日、視界の端に植物があることは 気持ちのいいものですが、 映像を見ているときだけは、端に動くものがあってほしくないようです。

落ち着いたのは、画面の高さの三分の一より低い鉢でした。 テレビボードの上に、器の高さが十数センチのものをひとつ。 それも、本体の真横ではなく、少し離した端のほう。 そこまで下げると、見ているときには視界に入らず、 消したときにだけ、ちゃんと目に入ります。

気をつけていることが、ふたつあります。 ひとつは水で、器は配線の真上を避けて置くこと。 もうひとつは熱で、テレビの背面は機種によってあたたかくなるので、 こぶしひとつ分ほど離しています。 土を使わない仕立てにしていると、 こぼす心配がないぶん、配線のあるところでも気楽に扱えます。

暗がりでも、育っている

テレビを置く壁は、窓から離れていることが多いと思います。 うちもそうで、置く前はいちばん心配していました。 結果としては、日中に新聞が読める程度の明るさがあれば育っています。 ポトスのように、明るい日陰で育つものを選んだのがよかったのだと思います。

それでも、葉の色が少し薄くなってきたと感じる時期はあります。 そういうときは、週末だけ窓辺に移して数時間あてる。 月曜にまた戻す。 水耕栽培の植物に、日当たりはどれくらい必要かを 考えていたときにたどりついたのも、 一か所で完結させなくていい、という結論でした。 器が軽いので、この往復はそれほど面倒ではありません。

いちばん長く見ている場所に何を置くかは、たぶん、どこに何を飾るかより大きな話でした。

映画が終わって、エンドロールが流れて、電源を切る。 部屋が急に静かになるあの数秒に、 黒い面の横で葉が一枚だけ揺れているのを見ることがあります。 エアコンの風なのだと思います。

とくに何かが起きるわけではありません。 ただ、消したあとの部屋が、 消しっぱなしのままでなくなった気がしています。

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